開発経緯
マクドネル・エアクラフト社が開発した第3世代の艦上戦闘機がF-4 ファントムII(命名規則変更前:F4H)。1950年代に入ると戦闘機に超音速時代が到来し、従来のようなドッグファイトよりもミサイルを主軸とした戦闘が主流になると考えられた。そんな潮流のなか、アメリカ海軍航空局は、航空機メーカーに次世代の全天候戦闘機の提案を要求。これに対しマクドネル社は、双発エンジンのF3H-G案を基にしたプロトタイプ2機を生産し、これは後にF4H-1と呼ばれた。ミサイル万能論が主流となったことでアメリカ海軍はミサイルのみの搭載を要求していたものの、F4H-1のモックアップ機は20mm機関砲の装備を想定したものとなった。1958年にはF4Hの初飛行が行われ、1961年にアメリカ海軍に正式配備。なお、同時期にアメリカ軍用機の命名規則が変更されたことで、F4HはF-4へと名称が変わっている。一方アメリカ空軍ではF-110 スペクターとして採用され、後にF-4Cと呼ばれることになった。このほか、アメリカ海兵隊、日本の航空自衛隊をはじめ世界各国で運用が始まり、生産数5000機以上を誇るベストセラー戦闘機としてその名を歴史に刻んでいる。
機体概要
機体は、全長19.20m、翼幅11.71m、全高5.02mと、同時代の戦闘機としてはかなり大型となり、F-15に迫る大きさである。主翼は胴体下端に取り付けられる低翼配置なのが特徴で、水平尾翼はそれよりも高い位置にある。また主翼先端は上反角(上に反っている)、尾翼は下反角(下に反っている)の角度が与えられた。大きな主翼とすることで翼面荷重は低くなり、空母離着陸も容易になっている。また、ミサイルキャリアーとしての運用を主軸に開発されたものの、低い翼面荷重は格闘戦に有利な機動性も確保しており、F-104とは逆の結果となったのが興味深い。実際、F-4の主戦場となったベトナム戦争では、格闘戦に強いソ連のMiG系列機にこそ苦戦したものの、それなりの実績を残している。エンジンは、ゼネラル・エレクトリック社製J79-GE-3Aを2基搭載し、マッハ2を超える速度を獲得。コックピットは全て複座型となっており、前席にパイロット、後席にレーダー迎撃士官が登場する。レーダーは、機種部分にウェスティングハウス社製のAPQ-72を搭載し、「AIM-7 スパロー」の運用を可能とした。
兵装
当初は固定武装を持たなかったが、ベトナム戦争では格闘戦の重要性が見直され、空軍機(F-4E)では「M61A1 20mmバルカン砲」が装備された。胴体下面にはセミアクティブレーダーホーミングの空対空ミサイル「AIM-7 スパロー」を4発、主翼下には短距離空対空ミサイル「AIM-9 サイドワインダー」を4発搭載可能。そのほか、空対地ミサイルとして「AGM-65 マーベリック」、「AGM-62 ウォールアイ」、対レーダーミサイルの「AGM-45 シュライク」、「AGM-88 HARM」を運用できる。さらに「マーク82」に代表される無誘導爆弾、「CBU-87」などのクラスター爆弾など非常に多くの兵装を携行可能となっており、マルチロール戦闘機として幅広い任務を行うことができる。
バリエーション
F-4 ファントムIIには非常に多くの派生型が存在する。アメリカ海軍の試作機YF4H-1を経て、当初はF4H-1F(命名規則変更後:F-4A)が45機製造された。初期の量産型F4H-1(命名規則変更後:F-4B)を経て、自動迎撃データリンクと自動着艦用機材を搭載したF-4G、パルスドップラーレーダーを搭載したF-4J、F-4Jの近代改修型F-4Sなどが存在する。
一方アメリカ空軍では、空軍向けの改修を行なったF-4Cが運用された。その後、レーダー警戒受信機の取り付けに加えて低空目標の探知能力を向上させたF-4D、20mmバルカン砲の装備やJ79-GEエンジンを搭載するなど大幅な能力向上を図ったF-4Eが製造された。さらに対レーダーミサイルを主武装とするF-4Eの改修型F-4G、偵察型RF-4B/RF-4C/RF-4Eも存在する。また、航空自衛隊ではF-4EJとして導入された。
エースコンバットでは?
F-4は、「3」と「6」を除きほとんどの作品で登場する常連機体。現実世界では海軍機のイメージが強いが、作品に収録されるのは空軍機のF-4Eが中心となる。ただし空母からの離着陸は可能で、海軍機として描かれることが多い。PS2やPSP時代の作品では初期機体として最初から使えることが多かったが、「7」では初回特典(その後有料DLC)扱いとなった。「5」は初期機体の座はF-5Eに奪われたものの、改修型のF-4G、計画のみのF-4Xまでプレイアブルとなり、ファンには嬉しい充実ぶり。どの作品も機動性は控えめだが安定性は高く、対空・対地攻撃のバランスに優れた性能調整となる。
主な兵装
・M61A1 20mmガトリング砲(固定武装)
・AIM-7 スパロー
・AIM-9 サイドワインダー
・AGM-65 マーベリック
・AGM-88 HARM
・マーク80シリーズ
AIM-7 スパロー
レイセオン社が開発した中射程空対空ミサイル。セミアクティブ・レーダーホーミング誘導方式を採用し、視程外射程が可能。航空自衛隊や西側諸国で広く運用されている。
AGM-88 HARM
NWCとテキサス・インスツルメンツ社が開発し、レイセオン社が製造する対レーダーミサイル。地対空ミサイルのレーダーシステムから放射される電波を探知し、攻撃する。
マーク82
ダグラス・エアクラフト社が開発した航空機用爆弾。マーク80系の中では2番目に小さい500ポンドで、無誘導投下して目標を攻撃。尾部に高抵抗フィンを装備することも可能。